【体験談】発達障害の患者が大暴れした話【必要な過程】

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とある精神科の病院に入院をしていた、小学生のY君はある日突然に大暴れ、院内の車をボコボコにしてしまいました。

しかし、その行動は彼が「自分の人生を取り戻す」ために、必要な過程だったのです。

はじめに

6つの診療科に通う男、作業療法士のコージです!

私は精神科の病院に勤めていましたが、秋が深まり肌寒くなってきたこの季節、発達障害のY君の事を思い出します。

騒然となったものの、彼の行動はとても勇気あるものでした。

そんな患者さんとの体験を、お話していきます。

アスペルガー症候群の小学生Y君

精神科のY病院に勤めていた頃、統合失調症と発達障害で入院をしていた患者さんがいました。

それが後ほど大騒ぎを起こす、小学5年生のY君です。

発達障害には、様々な種類がありますが、彼は「アスペルガー症候群」でした。

親から虐待を受けていた

彼はとても複雑な家庭で育ち、両親から虐待を受けていました。

父親はしつけが厳しく、母親は異常なまでに過保護というパターンです。

(異常な過保護も立派な虐待行為となります)

そのため症状が悪化し、Y病院に入院をしながら、送迎車で小学校の養護学級へと通っていました。

Y君の父親は一度も面会に来たことがありませんが、母親はたまに病院を訪れると、問題を起こして帰っていきます。

「息子が入院しているなんて、可哀想だ!」

と大声で騒いだり

お菓子を大量に買ってきては、Y君の病室に無断でこっそりと隠していったり

主治医や看護師と、しょっちゅう揉めていました。

また、精神科の病院なのでゲームをする時間は限られており、病棟で預かるのが決まりだったのですが…

お母さんは、Y君がゲームを没収されるたびに、新しいゲーム機やソフトを買って持ってくる、などという事もありました。

Y君が時折見せる怒りの感情

普段は大人しい小学生の子でしたが、彼は時々とても強い怒りの感情をむき出しにすることがあります。

例えば、病棟の看護師から怒られたり、家族とのトラブルがあったりすると、無言で壁を殴ったり大きな音を立てる事があるのです。

きっと、Y君は心の底で真剣に自分の人生について悩み、苦しんでいたのでしょう。

これらの行動は、いつも無表情でいる彼なりの、SOSだったのかもしれません。

しかし、彼は自分の殻を突き破る大きなきっかけを作るのです。

病院での体験談:Y君が送迎車を破壊した事件

Y君がいつも通りに学校に通っていったある日、迎えに行った職員から病院に緊急で電話がかかってきました。

なんと、彼は送迎車に乗ろうとせずに、駐車場で大暴れをしているようです。

抑えてきた感情がついに爆発

電話の内容によると、木の枝を折って持ってきた棒のようなもので、車をひたすらに殴り続けボコボコにしているとの事でした。

Y君は小学5年生でありながら、身長が高くかなりの肥満体系です。

学校に迎えに行ったのは、女性の職員だったので、どうにも手が付けられなかったのでしょう。

私を含めた男性のスタッフ3人が、急いで現場に向かうと

「もう学校は嫌だ! 病院にも戻りたくない!!」

と大声で繰り返していました。

私は彼の作業療法を担当していましたが、いつも大人しく無表情なY君が、ここまで感情を爆発させるのは初めてです。

鬼のような形相で、車を叩き続ける彼の心は、なんだか泣いているようにも見えました。

病室での彼との会話

私達が到着してから、しばらくするとY君は落ち着きを取り戻し、渋々と車に乗り、病院に帰ることになりました。

ボロボロになった送迎車で、精神科のY病院に戻ると、もう職員たちが大騒ぎです。

私が病室まで付き添うことになり、病棟に到着すると、複数の看護師がY君をきつく叱り始めました。

・なんて事をしてくれたんだ

・どれだけ周りに迷惑をかけたのか、分かっているのか

・もう二度と問題を起こすな

などの言葉を浴びせられる度に、彼は口を堅く結び、何の反論もせず、じっと我慢をしています。

私は彼の部屋に着くと、少し話をすることにしました。

まず、学校で何があったのか尋ねると、どうやら養護学級の先生とトラブルがあったようです。

会話を始めると、Y君はベッドに座ってじっと下を向きながら、体をこわばらせて身構えていました。

事情を把握してから

「大人のうるさい説教なんか気にするな」

と私が笑うと、Y君とようやく目が合い、ポカーンとした顔でこちらを見つめていました。

彼はきっと、作業療法士の私からも怒られると思ったのでしょう。

続けて

「よくやった! だけど、次はもう少しやり方を一緒に考えよう」

と言いながら彼の肩に手を置くと、Y君はとても驚いていました。

そしてその後、しばらく沈黙が続き…

「うん、わかった!」

と約束をしてくれたその顔は、ちょっぴり誇らしげでした。

私は発達障害ではありませんが、小学6年生で難病を発症し、誰にも理解されず辛い経験をしていたことがあります。

だからこそ、Y君の気持ちが痛いほどに理解できましたし、彼の味方であり続けたいと思ったのです。

翌日に緊急会議が開かれる

騒ぎがあった次の日、Y病院で緊急会議が行われることになりました。

もちろん、彼の作業療法を担当している私も参加です。

・送迎車の修理費を親に請求する

・Y君についての処分を検討

・再発防止

などについて、淡々と会議が進められていきましたが…

なんかもう、メチャクチャにイライラしてきたんですよね。

気が付くと、私は立ち上がり、大声で叫んでいました。

「車なんか直せばいい! それよりも肝心のY君の人生について、誰も話し合っていないじゃないですか!!」

恥ずかしながら、この時の自分はかなり熱くなっていました。

ずっとふさぎ込んでいたY君が感情を吐き出し、自分の人生を生きようとし始めたことの方が、送迎車よりもよっぽど大事です。

確かに、車をボコボコにするようなやり方は、良くなかったかもしれません。

しかしながら、人を殴ったワケでもなく、誰かを傷つけてもいません。

この部分については、彼を誉めてあげてもいいはずです。

心理学的には、親から虐待を受けていたり、ふさぎ込んでいた子が感情を爆発させるような出来事は、かなり良い傾向となります。

何も知らない人からしたら、急に暴れたと勘違いをされたり、誤解されやすいですが、それは

「自分の人生を歩み始めた」

証拠なのです。

発達障害のY君が持っていた才能

発達障害、アスペルガー症候群のY君ですが、彼にはとても素晴らしい才能がありました。

他人とのコミュニケーションが苦手だったり、学校の宿題はサボりがちだったものの、モノを創作する能力が高く、大人も顔負けのレベルなのです。

彼が作ったすごろくゲーム

私とY君は作業療法で、一緒に将棋をさしたり、様々な作品をつくりました。

Y君は小学5年生ながらも、将棋の腕は中々のモノであり、こちらが勝ったり負けたりしていましたね…。

なかでも、私が特に印象に残っているのは、彼が創り上げたすごろくのようなゲームです。

すごろくというと、最大で6の目が出る、四角いサイコロを使用した、簡単なものを想像するでしょう。

それが、全く違うんです。

彼の発案をもとに、私や養護学級の先生と一緒に完成させたゲームは、最大で12の目が出る多面ダイスを二個使う壮大なものです。

あまりにも、スケールが多すぎるため、普段は巻物のようになっています。

その大きな紙には、Y君が好きなウルトラマンや怪獣の絵が描かれていたり、デコレーションのシールがびっしりと貼られ、キラキラと輝いています。

サイコロをふると、彼が考えたオリジナリティあふれる冒険がたくさん起こるテーブルゲームですが、商品化してもいいようなレベルです。

将来はクリエイターに向いているでしょう

小学5年生のY君だけではなく、発達障害を抱えている方々は、自分が好きだったり得意な分野において、とてつもない能力を発揮することが少なくありません。

人間関係やコミュニケーションに、苦手意識があることが多いものの、需要が急増しているIT系の分野や、クリエイターに向いている人が多いです。

そしてその事実は、国や文部科学省が明言していますし、詳しくはこちらの記事で解説をしています↓

【発達障害】おすすめの仕事を徹底解説【精神分野が専門です】

アスペルガー症候群のY君ですが、ゲームや創作が大好きでした。

プログラミングを勉強して、ゲームクリエイターを目指す道もアリかな、と個人的には強く思います。

終わりに

この病院を退職してから、数年が経過したので、彼は今ごろ中学生~高校生ぐらいの歳になっているでしょう。

秋になるとふと思い出すので、この記事を執筆してみました。

Y君の人生が、素晴らしいものになりますように、心から願っています。

最近は、無料でプログラミングを学べるスクールも増えてきましたし、リスクなんてほぼゼロです。

この記事を読んだあなたが、自分に自信を持って、行動することを願っています。

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